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定演は桜の花とともに
 
 いよいよ、桜前線も北上し、定演の季節とともに、その花を満開とさせます。

 各高校吹奏楽部の部員の皆さん、顧問の先生方、関係者の方。待ちに待った定期演奏会ですね。

 日頃培ったもの(それは演奏技術だけではないはずです)を、学校の名前を背負って、存分に発揮されて下さい。

 『部活.ネット』では、一昨年・昨年に続き、「吹奏楽定演特集」を組むことになりました。

 なにぶん、僅かなスタッフで運営している関係上、取材⇒即時アップ、とはなかなかいきませんが、2005年度も、よろしくお付き合い下さいませ。


■2005.4.29早朝 by 管理人

 鶴嶺高校吹奏楽部定演のアップを以って、この特集を終了とさせて頂きます。
 近日中に、私(管理人)なりに感じたことを書かせてもらうことにしますので、お楽しみ(?)に。
 吹奏楽関係の皆さん、お疲れ様でした。

吹奏楽定演特集を終えて
 
2005.5.3 by 管理人
 
 「部活.ネット」の始まりが、2003年春の吹奏楽定演取材だったということもありますが、「春⇒桜⇒定演」というのが「部活.ネット」開始以来の一連の流れになっていて、各校吹奏楽部の演奏を聴くと、初心に帰れる気がします。

 今年は藤沢西・鶴嶺・北陵・西浜・寒川・茅ヶ崎の順で聴かせてもらい(寒川はリハーサルのみライブ、本番はビデオですが)、茅ヶ崎地区の吹奏楽のレベルが年々上がってきているのを肌で感じました。

 また、それぞれの学校の特色というのも如実にわかるのが、定演の面白さでもあります。

 ちょっとした視点から、各校の分類をしてみましょう。
 
(1)OBがステージに乗っているか
[乗る]藤沢西、西浜、寒川、茅ヶ崎
[乗らない]鶴嶺、北陵

(2)学生指揮の有無
[有り]藤沢西、鶴嶺、茅ヶ崎
[無し]北陵、西浜、寒川

(3)ゲストの有無
[有り]北陵、寒川、茅ヶ崎
[無し]藤沢西、鶴嶺、西浜

 いやいや、分類したからといって、そこに大した意味はないのですが、何となく部の方針が見え隠れするようにも思えたりするわけです。その証拠に、わずか3つの分類でありながら、全く同じ答えの組合せになっている学校は、ひとつもありません。

 特に今年は寒川が「コラボレーション」を意図して、大胆なゲスト招集をしていたのが印象に残ります。また、北陵は来年からはゲストなしでの演奏になるそうで、そのことだけでも、それぞれが様々なことを模索しながら、進んでゆこうとしているのがわかります。

 たかが部活、されど部活。

 今、吹奏楽は一つのブームになっています。多くの学校で、吹奏楽部に入る生徒が増えていると聞き及んでいます。テレビで所ジョージが吹奏楽を取り上げたり、映画『スウィングガールズ』がヒットしたりという、メディアの影響であるにせよ、音楽人口が増えるのは、基本的によいことです。
(ちなみに、私も音楽を始めたきっかけは「女の子にモテたい」という、極めて正常なものでした。結果?聞かない方がいいこともありますぜ....)

 そうした外的要素が、部活の中にも間違いなく溶け込んでゆきます。高校の3年間というのは、常に「既存のもの」と「新しいもの」とがせめぎ合っている時代です。それに関わる大人たちにも葛藤はあります。

 しかし、音楽にはそうしたあらゆることを呑み込んでゆく力が間違いなく存在します。

 ジャンルは言うに及ばず、世代・時代を超え、国境さえも超えることは、この春の演奏を聴いただけで体感できました。

 素晴らしい演奏を聴かせてくれた各高校吹奏楽部関係者の皆さん。お疲れ様、そして、本当にありがとうございました。

 また、素人でありながら、勝手な感想などを書いてしまい、心苦しくもありますが、寛容な心で許して下さった方々。激励のメールや感謝のメールを下さった方々。重ねて、ありがとうございました。

 是非、この「部活.ネット」が継続し、来年の定演の取材にも伺えるよう、鋭意努力することをここに誓います。皆さんも、これに懲りず、ご協力下さいね。
 
■最新情報・・・寒川吹奏楽部、コンクールはA部門で!■

 
 過日、寒川高校指揮者の岡田寛昭さんより「衝撃のメール」が届きました。

 数年前には、部員わずか5名という冬の時代を迎えていた寒川高校吹奏楽部ですが、実績を積み重ね、部員たちが自信をつけてゆく過程の中で、少しずつ部員も増えてきました。

 そして、この春、ついにコンクールB部門の最大人数である35名を突破し、部員たちとの話し合いの中で、「A部門(50名までの編成)に挑戦」することが決まったそうです。既に課題曲・自由曲ともに決まり、臨戦態勢です。

 逆に、鶴嶺では35名を突破したのですが、「Bを極める」という姿勢で、こちらも気合いは十分のようです。

 どちらがよい・悪い、ということでなく、こうしたところにも、部の方針が垣間見える面白さ(?)があります。両校の粘り強い活動を称賛したいと思います。

 いずれにせよ、寒川のA部門挑戦は、湘南地区のコンクールに大きな刺激を与えることになるでしょう。今から楽しみにしていますね。
 

※上記情報は2005年5月3日現在のものです

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指揮者の交替が意味すること
 
 この春、桜前線の訪れは遅く、文化会館周辺では、4月3日の茅ヶ崎高校定演の際、ようやく6分〜8分咲き、といったところであった。

 そして、茅高吹奏楽部も、もしかするとその桜と同様、まだ満開の円熟期ではなく、花びらをつけ始めたばかりなのかもしれない....。

 おぉ、桜の花に喩えるなど、私も詩人になったものだが。
 
 茅高吹奏楽部には、この春大きな変化があった。

 それはメイン指揮者が“カリスマ”伊藤寛隆氏から、その高校時代より伊藤氏の薫陶を受けている内川裕子さんにバトンタッチされたことである。

 伊藤氏は20年近くも茅高吹奏楽部を率いてきた。それは、彼が学校の教師ではなく、嘱託顧問だからこそ為し得た「偉業」と呼んで差し支えないだろう。

 彼自身がクラリネット奏者として、いよいよ脂の乗ってくる年齢になったこともあり、また、私など外部の人間には窺い知れない事情もあったと推測されるが、この交替劇は、けして突然起こったものではないはずである。

 昨夏のコンクール(こちらを参照)を思い出す。

 初日のA部門(50人までの編成)では伊藤氏が指揮を執っていたが、二日目のB部門(35人までの編成)で指揮棒を振っていたのは、内川さんであった。

 いや、もっと遡れば、昨春の定演(こちらを参照)でも振っていた。

 つまり、伊藤氏が突然いなくなる、という事態を避け、静かに、そして少しずつ内川さんへと継承していった様子が見て取れる。

 この日の定演は、そのお披露目であり、新生茅ヶ崎高校吹奏楽部の気概を見せる場でもあったわけだ。

 第T部の司会をされた中田麻美さんがプログラムの中に、「この5年間の中で、今年が一番悩みながら演奏会の準備をしてきたように思います」と書かれている通り、部員も内川さんも、そして彼らを見守るOB・OGたちも、きっと不安もあったに違いない。

 しかし、タイトルに書かせてもらった通り、それは『大いなる継承』であったと、私は考える。

 完成形ではない、多分に変化する余地を残して、茅高吹奏楽部は新たな出発をしたのである。
 

  

 
パーカス、低音部のシンクロ性高く、思い切りのよい演奏
 
 私が『大いなる継承』と言ったのは、定演のパフォーマンスに於いて、彼らが素晴らしい音楽性を発揮したからである。

 勿論、私は素人であるし、個人的な趣味も入ってしまっているだろうが、ダイナミックス・音のバランスは申し分なく、特にパーカッション部隊と低音部が思い切りよく演奏している印象があった。また、第V部では、OBも入っているとはいえ、木管の重厚さは、特筆ものであった。

 今回の定演は、当日の時間の関係で、インタビューらしきものはほとんど取れていないので、私の感想(あくまで「感想」ですので、的外れだったらごめんなさい)をちょこっと記しておきます。

■第T部■
 2曲目の「火の伝説」、3曲目の「民衆を導く自由の女神」はいずれも難曲と思えたが、細かなフレーズでのシンクロ性が高く、ブレークにも切れ味があった。

 難しい曲を、「難しい曲だなぁ」と感じさせず、ナチュラルに演奏していて、聴く側に安心感をもたらしてくれるものであった。殊に「民衆を導く自由の女神」の木管での始まりは、“何か”を予想させるに十分なものであった。

 この第T部を聴いて、「パーカスがいい味を出すバンドだなぁ」と思った次第だ。

■第U部■
 「どんな世代にも楽しめるステージ」

 ここが茅高吹奏楽部の一つのウリになっていることは、明白。一昨年・昨年と定演に足を運んだので、かなり派手な踊り等もあろうかと予想していた。

 確かにダンスもあった。照明も相当凝ったものであった。

 しかし、今回に関しては「音楽性」での勝負にも出ているのかな、という印象が強い。

 各校に於ける定演に対する考え方の違いが如実に出るのは、この辺りであろう。ちなみに、茅高の第U部は、MCの巧妙さも含め、間違いなくレベルが高い。

 学生指揮の磯崎奏さんが演奏終了後、ジャンプの末、転倒していたのは狙いだったのかどうか。それについては聞いていないのだが、奏(かなで)という名前が素敵。ご両親が音楽を愛しているのだろうなぁ、と勝手に推測してました。

■第V部■
 1曲目は、指揮の内川さんと高校時代の同期で、ともに学生指揮をやっていた、トロンボーンの佐々木舞さんがソリストとして登場。彼女らは、考えてみると、まだ二十歳である。

 こうした舞台に立ち、楽しそうに吹く姿(あくまで私から見て、という意味です)は天晴れである。本人は実は苦しいのかもしれないが、「楽しそう」と感じさせるのは、一種の才能なのだと思う。

 また、伴奏はコントラバスがしっかり音を出している印象で好感を持てた。

 2曲目の『大序曲「1812年」作品49』はダイナミックレンジの広さだけでも圧巻であったが、木管がスローに演奏する場面や、会場内からトランペットが鳴る場面は感動的であった。

 どうやって練習しているのだろうか...。もしや、「ぶっつけ」?

 OB・OGを含めた演奏は茅高吹奏楽部の伝統であり、それを徹底しているところが、他の高校と一線を画す存在でもある。その力強さが、今回の指揮者交替という重い十字架さえ背負えた、最大の源ではなかろうか。

 
 これから夏のコンクールへ向けて、彼らは大きく飛躍するきっかけを掴んだことであろう。指揮の内川さんもステージで「やるしかねぇ」と叫んでいたし。

 演奏前、心配していたことは杞憂に終わった。彼らの今後に大きな期待をしようと思う。

  
  
第U部は茅高ならではのダンスと譜面台隠し。照明が凝っていただけでなく、演奏もしっかりしていた。写真右下は第U部司会の大串一武さんと定演準備部隊のリーダーたち。
  
左)挨拶をする部長の江塚和典くん 中)トロンボーンソロの佐々木舞さん 右)司会の中田麻美さんと“カリスマ”伊藤寛隆氏。伊藤氏は「彼女(内川さん)は丹念に細かく練習してくれている。そろそろそういう人が表舞台に上がってもらいたい。これからは彼女をサポートしてゆきます」と語った。

  
左)客席から鳴り渡るラッパ部隊 中)演奏終了 右)ステージでの卒業式

茅ヶ崎高校吹奏楽部 第28回定期演奏会プログラム
 
■T部
 「ホープタウンの休日」(S.ライニキー)
 「火の伝説」(櫛田朕之)
 「民衆を導く自由の女神」(樽屋雅徳)

■U部
 「Sing, sing, sing」
 「見上げてごらん夜の星を」
 「キューティハニー」
 「ディズニーメドレー〜ユーロビート版」

■V部
 「クロッキー 〜吹奏楽とトロンボーンの為の〜」 (W.G.スタイン)
 『大序曲「1812年」作品49』(P.チャイコフスキー)

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LIVEで聴きたかった...
 
 私(管理人)は、寒川高校の定演をひどく待ち望んでいた。

 それは、昨春の定演(こちらをご参照)で大きな痺れに襲われたことと、昨夏のコンクール(こちらをご参照)での彼らの成長振りに目を見張ったことが原因である。

 ところが、である。寒川高校定演の日時が、私の本業である学習塾の授業と思い切りかぶっている。

 真剣に、授業の時間帯をズラすことも考えたのだが、さすがにそういうわけにもいかず、泣く泣く本番前の事前取材だけ、私がやり、本番は別のスタッフがビデオ撮影を含め、聴くことになった。

 即ち、私は彼らの本番の演奏を聴いていないことになる。
(当たり前か...)

 それで文章を起こすわけだから、申し訳ない気持ちにもなるが、ビデオはちゃんと見たので、勘弁して頂きたいと思う次第である。

 一昨年の夏、「部活.ネット」が寒川高校吹奏楽部を訪ねた頃(こちらをご参照)は、まだ実績と呼べるような実績もなく、部員が5年間掛けて、わずか5名から30名を超すまでに至った、という途上期であった。

 しかし、その夏のコンクールで、初めて地区大会を突破、県大会への出場権を掴むと、昨年夏のコンクールB部門(35名までの編成)で、ついに地区トップの成績で県大会への出場を果たしたのだ。

 こうした実績は、部員たちばかりでなく、部員数5名の時代からタクトを振り続けた指揮者の岡田寛昭さんにも自信を植え付けた。

 そして、昨春の定演の際には「劇的に変わった」(岡田さん・談)彼らの演奏を聴き、胸を打たれたわけだ。

 あれから一年。期待するな、という方が無理である。だからこそ、本当に生で聴きたかった。

 でも、実は本番前に、空前絶後の経験をさせてもらう機会があり、それを胸に、ビデオで我慢したのであった。
(この件については、後述)
 

  
ホール入口近辺には、音楽と絵、音楽と書というコラボレーションのコンセプトが散りばめられていた

テーマは「和」
 
 今回の定演のテーマは『和』である。

 ちなみに、ステージ高く掲げられた『和』の文字は、たたみ三畳もの大きさに、岡田さんの吹奏楽の師匠でもある、岩島徹先生(高浜高校)がお書きになったものだそうだ。近くで見ると圧倒される。

 この一文字には、「部員の和」「地域の和」「人の和」「和ませる」といった意味のほかに、「書・絵と音楽とのコラボレーション」「合唱やダンスと吹奏楽のコラボレーション」という意味も込められている。

 全体が三部構成となっているうちの、特に第二部がコラボレーションの具現化となっている。

 寒川地区の合唱団やダンスチームがステージに登場し、華を添える、という趣向である。

 初心者であっても、鍛え、コンクールで優秀な成績を収める、という一つの方向性を見出すことに成功した寒川高校が、次の段階として着手したものと言えよう。

 その成否は、この定演だけで計られるものではなかろうが、一回りも二回りも成長した彼らの進取の精神が試されることには違いない。

 さて、演奏の方であるが、開演前に岡田さんが「今年は100%で振れる」と言っていた通り、この人数でもこれだけのダイナミックスを出せる、ということを証明するような素晴らしいものであった。

 特に第三部の演奏は、寒川高校吹奏楽部の成長を象徴するかのように、強弱のメリハリがあり、絵画的な旋律を損ねないソロも素晴らしいものがあった。

 吹奏楽について素人の私が聴いていても、「こりゃ、技術的にかなり難しいんじゃないの?」と思える曲が2つ続いたが、「ミスをするのでは?」といった心配を全く寄せ付けず、寒川吹奏楽の集大成となっていたように思う。

 第二部に於けるコラボレーションについては、まだまだプロデュースできる余地はあると思われるが、大胆に「声」を取り入れたステージは、近隣他校にはない独自性もあり、今後、寒川高校吹奏楽部が地域との一体感を深めてゆく意味では、大いなる一石を投じたものとして評価したい。

 さてさて、新高2・高3は計16名。毎年、この程度の人数から、未経験者も含めて、少しずつ増殖し、夏までには高いレベルに仕上げてくる寒川高校。

 また、夏のコンクールで会えることを楽しみにしています。今度は、県大会と言わず、関東大会を目指して下さい。

  
  
実に自信に満ちたステージであった。右下は今春卒業生たちによるジャズ演奏。これも絶賛モノだ。
  
左)コール・アザレア合唱団 中)トゥルーズ(ダンスサークル) 右)集合写真
  
左)司会を務めた相川真由美先生 中)鈴木前校長と石塚新校長(写真右) 右)ステージ上での卒業式

指揮者・岡田寛昭さんへの直前インタビュー
 
 岡田さんへのインタビューも、これまでに何度もさせてもらったが、回を追うごとに、彼自身が成長し、生徒を束ねてゆく力が増しているように感じられる。

 今回のインタビューでも、それを強く感じるものとなった。

管理人「昨年の定演では、“コンクールは技、定演は心”ということを仰っていましたが...」

岡田さん「もう、去年とは比べものにならないくらい、二段階・三段階成長しましたから、技と心の融合は見違えるほどです。だから、定演は心、ということを敢えて言わなくても大丈夫、という力がつきましたね。」
管理人「なるほど。では、今日の聴きどころというと、どのあたりでしょうか。」
岡田さん「曲で言うと、第二部の『翼をください』ですね。吹奏楽にどうしても必要な“歌心”を実際に発声を取り入れることで、コラボレーションも図りたいと思っています。あと、第三部の『詩的間奏曲』は、部員たちの入り込み方が尋常ではないので、是非、聴いてもらいたいですね。」
管理人「今の心境は?」
岡田さん「以前だったら、本番で失敗したらどうしよう、という気持ちにもなったのですが、今年は早く聴かせたい、という気持ちが強いですね。言い方を悪くすると、たかが高校生だとバカにしていたところもあったのですが、高校生でもこれだけ出来るようになるんだなぁ、ということを感じて、やるだけのことはやってきましたから。去年でも、60〜70%くらいで振っていたのですが、今年は初めて100%の気持ちで振れると思います。」
管理人「岡田さんがそう感じるのは、岡田さん自身の成長もあるでしょうね。嘱託顧問でありながら、ある意味、教員以上に生徒に対して真摯であるように私には思えます。」
岡田さん「そう言って頂けると嬉しいですね。私も音楽を通じて、生徒たちと対峙している、という責任感はいつも持っているつもりですから。」
管理人「では最後に。今後の寒川高校吹奏楽部の運営についてお聞かせ下さい。」
岡田さん「実は、1年生(新高2)たちがちょっと幼稚なところがあって、感情がすぐに出てしまうというか...。それを3年生たちが、声を掛けて、自分たちも1年の時はそうだったと言ってくれまして。私も、逆にそういった子たちには純粋な感受性があると考えるようになりました。そして、その中でいかに“和”を出してゆくか、ということが、今後の演奏にも繋がると考えています。彼らの可能性を見てもらえるような部でありたいですね。」

 岡田さんは、ひと言ずつ言葉を選びながら、丁寧に答えてくれました。

 今後の寒川高校吹奏楽部の発展を、心から祈念します。

 尚、定演後、岡田さんからメールがあり、「河本さん(管理人)も、大変なところに足を突っ込んでしまって、ちょっと同情しています」という、心温まるメッセージを頂きました。

 やっぱり大変なところだったんだ....。

  
彼らはボクだけのために『翼をください』を演奏してくれたんだ...
 
管理人特別寄稿:「たった一人のaudience」
 
 ♪この大空に翼を広げ 飛んでゆきたいよ
  悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ ゆきたい


 『翼をください』は、私が中学生の頃、フォークグループの「赤い鳥」が歌ってヒットした曲である。勿論、私も何度か歌ったことはあるし、いい曲であるとも思っていた。

 しかし、それを聴いて涙が止まらなくなるほど感動するとは予想もできなかった...。

 事の発端は、こうである。

 本番を聴けない私は、致し方なく、午後7時の開演に先立つこと6時間前、昼休みを取っているはずの寒川高校吹奏楽部を、文化会館の楽屋に訪ねた。

 指揮の岡田さんと、いろいろ話しているうちに、今回の定演のビデオを撮る業者がいないことが判明し、「部活.ネット」で撮影しましょう、ということになった。
(ちなみに、「部活.ネット」ではWEB作成は勿論であるが、映像関係も仕事として請け負っています。勿論、今回は仕事ではありませんが)

 それがきっかけだったのかどうか、岡田さんが「河本さん(私のことです)、15分か20分、時間ありますか?ちょっと聴いていってもらいたいんですが...」と、誰もいないステージへと私をいざなう。

 そこに、部員たちが続々と現れ、整列し始めた。

 こんな時間にリハーサルなのだろうか?

 勿論、千人入る客席に居るのは私だけである。一体何事が....。

 岡田さんの掛け声のもと、彼らは位置につき、立ち上がり、「気をつけ」の姿勢で一斉に私に向かって挨拶をした。

 そして、やおら『翼をください』の演奏を始めた。岡田さんが、「今回の定演の聴かせどころの一つ」と言っていた曲である。

 初めは写真を撮ることに専念していた私だが、合唱が始まると、涙が止まらなくなってしまった。

 北陵高校定演でも、相当危ないシーンもあったが、「自分は取材者である」という最後の一線で踏みとどまった。しかし、今回は彼らの演奏と歌声、さらには、それを聴いているのが自分一人だけ、というシチュエーションに、最早、動くことも出来ず、あとからあとから涙が溢れ出てくる。

 音楽を聴いて、人前で泣いてしまうなど、生まれて初めてのことであった。

 それほど彼らの演奏は素晴らしく、心を打つものであった。
(定演本番では、彼らに加え、合唱団も入っていた)

 彼らは、演奏が終わると、再度私に向かって「ありがとうございました」と、気をつけ姿勢から挨拶してくれた。

 「ありがとう」を言いたいのは、こっちの方である。

 勿論、生まれて初めてであり、今後もおそらくはないと思われる、「たった一人のaudience」のために演奏された『翼をください』。

 本番をLIVEで聴けなかったという無念さを、彼らの気持ちのこもった演奏と歌で、一気に癒された。いや、それだけではない「何か」を私は感じた。それは言葉に出来ないような...。

 岡田さん、寒川高校吹奏楽部の皆さん。あの時、言葉に詰まって、ちゃんとしたお礼も出来ず、ごめんなさい。この場を借りて、お礼の言葉を述べさせてもらいます。

 素晴らしい演奏を聴かせてくれて、本当にありがとう。
寒川高校吹奏楽部 第6回定期演奏会プログラム
 
■T部
 「SIGNATURE」(J.ロースト)
 「NOVENA」(J.スウェアリンジェン)
 「春の喜びに」(J.スウェアリンジェン)

■U部
 「春の音に乗って」(渡辺哲哉)
 「夜空ノムコウ」(川村結花)
 「MY BONNIE」(スコットランド民謡)
 「フラワー」(HAL/音妃)
 「翼をください」(村井邦彦)

■V部
 「詩的間奏曲」(J.バーンズ)
 「祝典のための音楽」(P.スパーク)

管理人手記 
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日々是合奏
 
 西浜高校吹奏楽部について語る際、読者の皆さんに知っておいてもらいたいことがある。

 それは、現在「過渡期」にある、ということだ。

 顧問の渡辺良子先生が、藤沢西高校から赴任して、この春でちょうど3年。それ以前は、夏に行われるコンクールにも出られないほど、部員数は枯渇していた。
 
 そこから、昨年秋には、ついに単独での演奏会(こちらをご参照)を開くまでになった。

 その歴史を知る者にとって、今、彼らがスプリングコンサートのステージに乗り、中学生たちに模範を示し、さらにはトリを務めるという様は、まさしく「石の上にも三年」という言葉を彷彿させる。

 演奏前のインタビューで、良子先生は以下のように語っている。

 「人間が丸くなりました」と。

 前任校の藤沢西をコンクール県大会出場の常連にした良子先生にとって、西浜吹奏楽部は子供っぽく映ったことであろう。歯痒くもあったに違いない。

 現在では、基礎練習・音出し・個人練習・譜読み・パート練習・セクション練習も、生徒たちと一緒にやっている。「日々是合奏」というわけだ。

 これこそが「過渡期」特有の現象だと考える次第である。

 つまり、まだ西浜吹奏楽部の中では、「強い個」「突出した個」が出てくるだけの風土が出来上がっていない、ということである。

 しかし、これは裏を返せば、「まずはバンドとしてのまとまりから出発」ということを意味する。良子先生も、試行錯誤を繰り返し、現在は“同じ目線に立つ”というこの地点に辿り着いた、ということなのであろう。

 それでも、コンクールでは、昨夏は銀賞にまでステップアップ。今年は密かに金賞狙い、というのがもっぱらの噂だ。

 さて、春のこの時期に「定期演奏会」という名称のステージを行わない西浜高校では、このスプリングコンサートがメインステージ。演奏はどうだったろうか...。

  
 
 ステージに乗ったのは、OB数名を含め27人。音の重厚さでは、北陵高校や茅ヶ崎高校には敵わない。しかし、少人数編成ならではの新譜を探して来て、西浜高校のみならず、中学生でも演奏できるようなものを紹介する、といった任務・責任も帯びての演奏であった。

 ダイナミックスに欠ける分、その中での強弱感やシンクロ性に重きを置いた演奏で、特に最終曲の「ザ・スリーピング・プレイス・オブ・ザ・スターズ」 は、風の音を模した声による演奏(?)もあり、構成的にも楽しいものになっていた。

 以前に較べ、ミストーンは明らかに減り、明るく、楽しもうという雰囲気は十分に伝わるものであった。

 良子先生というキャラに、「練習皆勤男」長谷山晴彦部長が率いる西浜吹奏楽部。十分な伸び代のあるバンドだけに、今後が楽しみである。

「男子部員増殖計画男」いつのまにか部長に

会うたびワイルドになる長谷山くん
 
 西浜高校吹奏楽部部長・長谷山晴彦。

 彼は一昨年の夏、初めて取材に訪れた際は、短い髪の可愛い奴であったが、「部室をもっと男臭くする」という名言を残して、『男子部員増殖計画』なるものを企てていた。

 そして、今や彼の功績により、男子部員は7名にまで増殖。
 
管理人「部長に出世していたとは...。で、部長ってどの辺が大変ですか?」
長谷山くん「大変なことはないんですが、皆、ちゃんと練習には出ようぜ、と言いたいですね。」
管理人「君が入部した時と、変わった点はありますか?」
長谷山くん「意識が上がってきたことは間違いないですね。一人一人の音が大きくなってきたと言うか...」
管理人「課題点はどのあたりかな?」
長谷山くん「とにかく部員を増やして、大きな曲が吹きたいですね。お互い、もたれ掛かれるのって、いいじゃないですか。」
管理人「では、最後に目標を聞かせて下さい。」
長谷山くん「新入生で何とかトランペットと低音部の子を集めたいですね。そして、コンクールでは勿論金賞に手が届きたいと思います。」

 彼自身は「リップスラー」(管理人初耳。どうやら指を変えずに音だけ変える、という技のこと)という金管楽器特有の音出し練習に時間を割いて、技術の向上を目指しているらしい。

 西浜では初心者歓迎なので、是非、これを読んだ方、入部されてはいかがでしょう。

渡邊良子先生からのメール
 
 昨日は 部員たちは、受け付けや場外の業務を予想以上に良くこなし、周りからも誉められて満足そうでした。こうしたこと一つ一つが彼らの自信に繋がっていってくれればと思います。

 私自身も、地元の中学の先生方から、西浜に入学してくる子達と引き合わせてもらったり、情報交換をしたりと、有意義な一日でした。

 我々の新入部員獲得作戦はこのスプリングコンサートから始まっています。

 中学の顧問の先生たちの助言は、中学生さんたちにとても影響力があるので渡邊がどんな奴かしってもらい、「良子さんになら安心してまかせられるわ」といってもらうと、とてもありがたいのです。

 きのうの演奏は、録音を冷静にきくと、いろいろ、ちいさな事故が起こっていて、まだまだだなあとおもいましたが、演奏中はとても楽しく、部員たちもしっかり集中しながら、楽しんでいたようで、終わった瞬間の満足感は、この三年間で一番大きかったと思います。

 この三年間で、私は、足りないものを数えるよりは、今あるものをしっかり育てていこうと思うようになりました。自分の今の居場所を一番好きになることができて、幸せだなあと思っています。

 これからも、指導者としての自分を磨き、西浜ブラスをもっともっと輝かせて見たいと思います。
まず、あせらず、一歩一歩進んでいきます。


西浜高校 スプリングコンサート プログラム
 
■「サウンド・ゴーズ・ラウンド」(シルベール・ディンナー)
■「ハリーポッターとアズガバンの囚人」からのセレクション(マイケル・ストーリー編)
■「ルーニーテューンズ:バックインアクション」(ビクター・ロペス編)
■「フィール・ザ・ビート」(アンドリュー・ワイグネン)
■「ザ・スリーピング・プレイス・オブ・ザ・スターズ」 (ラルフ・フォード)

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絵画的波状攻撃
 
その時、ボクは泣き出してしまいそうだった...
 
 静寂なる殺気。

 とでも言えばよいのだろうか。HWEの定演は、昨年以上に聴く側の脳裡に「絵画」を連想させ、しかも、その絵が聴く人それぞれの断片的な記憶を瞬時にして甦らせるという趣であった。

 それが苦悩であったり、寂寥感であったり、また、喜びであったり。目を閉じて聴いていると、背景画の輪郭は次第に鋭さを増し、その絵の中に自らが溶け込んでゆくような。泣き出してしまいたくなるような。呼吸することさえ、憚られるような...。


 一高校のたかが部活である。しかし、積み重ね、磨きこみ、極めていけば、音楽は絵画になる、ということを教えてくれた。

 私(管理人)は、HWEを丸二年追い続け、今回が三度目の定演であったが、年々、精緻の度を上げていっている、ということを保証する。

 過剰な演出は全くない。それどころか、「高校生なんだから、もっと遊びの部分があってもいいのでは?」と、言いたくなる人もいるだろう、と思わせるほど、音楽だけで勝負を挑んでいる。

 それゆえ、聴く側も安穏とはしていられないのである。挑まれた勝負を受けなければならない。

 ステージ上のプレーヤーたちの緊張と、聴衆の緊張。それが融合した空間が成立。

 やはり、“静寂なる殺気”と呼ぶべきであろう。


 プログラム本編第一部に於いて、1曲目「アルセナール」(HWE顧問・丸山透先生指揮)、2曲目「海の歌」(大庭中学・三浦孝一先生指揮)、3曲目「トランペット協奏曲」(高倉中学・橘田誠司先生指揮)と続く様は、あたかも『絵画の波状攻撃』であり、三人の指揮者が聴衆を巻き込んで、リレーをしているかの如きであった。

 勿論、それに応えられるだけの修練を積んできた部員たちも立派であり、殊に「トランペット協奏曲」では、ゲストのアレクセイ・トカレフ氏のソロを支えるという意味の伴奏ではなく、彼のアドレナリンをも噴出させる熱のこもった演奏であった。

 この曲は、事前に学校でのリハーサルも聴かせてもらっていたが、明らかに鳴りが違うものになっていた。鳥肌が立つ、と言えば、陳腐な表現になるが、まさにその形容が当たっている。

 私は、自分が取材者である、という最後の拠り所によってのみ、涙が溢れ出るのを堪えられた。音楽の持つ偉大な力の前に、召し入るほど、素晴らしい演奏であった。


 第二部は、全曲丸山先生が指揮を執られた。

 「悪魔の踊り」では、低音部の安定感、細かなフレーズでのシンクロ性、スタッカートの切れ味、いずれも高いレベルで、木管・打楽器もひじょうに効果的に演奏されていた。
 
 「勇敢な飛行」では、全体的なバランスが心地よく、スローな金管部は映画のような印象。ブレイクのシンクロ性やダイナミックレンジの広さ・クレシェンドの効果は、私好みの曲であった。

 上記2曲は、昨夏のコンクール(こちらをご参照下さい)でも聴かせてもらったものであるが、人数制限なしのフルで聴くものは、やはり迫力が違う。

 最終曲の「スペイン奇想曲」には、“達人”こと村松達之氏がカスタネットで参加。相変らずの鋭い切れ味で、部員・先生たちの思い入れ深い(と思われる)この曲を盛り上げてくれた。丸山先生・部員たちの想いが伝わってくる演奏で、まさしく割れるような拍手が起こった。

 アンコールは「Death or Glory」(4年連続、この曲だそうです)。

 曲の途中から、全部員が総立ちとなっての演奏は圧巻で、最後を締めくくるのに相応しく、また、HWEらしい『音楽に始まり、音楽で終わる』構成を、ここで完結させた。

 もう一度言おう。

 “静寂なる殺気”をありがとう。

 HWEの来春の定演が既に待ち遠しい。

 部員ならびに関係者の皆さん、お疲れ様でした。

  
開場前から、お客さんがいっぱい。集客できるだけの価値のある演奏会であった。

  
本ステージ前に披露されたアンサンブル。左から、打楽器四重奏、フルート四重奏、HWEサックスオーケストラ(現役・OBの混成。HWE音楽監修の漆原優さんがリーダー)

  
晴れの舞台にゲストとして招かれた藤沢市立高倉中学吹奏楽部。指揮は、「ダンディ」の異名を取る橘田誠司先生。赴任一年にして、生徒たちの気持ちを掌握。HWEメンバーの面々にプレッシャーを掛けるほど、中学生としては見事な演奏であった。

  
第一部。左から客演指揮の三浦孝一先生(大庭中学)、橘田誠司先生(高倉中学)、ゲストのアレクセイ・トカレフさん

  
第二部。司会は望月誠先生(湘洋中学)、ゲストの村松達之さん。丸山先生、渾身の指揮。アンコールでは全員総立ち

お疲れ様です

実は事前にインタビューしてたりして...
 
その1:パーカスチーム
 
 HWEに興味のある人なら、知らない人は「モグリ」と称される覚悟の必要な、“達人”こと、村松達之さんと、その指導を受ける面々。

 HWEではお互いを本名で呼ばない、という流儀があり、場合により、先生さえもが部員の本名を忘れるという、考えようによっては恐ろしい集団である。

 パーカスチームもその例に漏れず(?)、部外者には「なぜ、そう呼ばれているの?」というニックネームもあるが、その辺は敢えて聞くまい。
 
 訪ねたのは、ナント定演の2ケ月も前。アップするのに、どんだけ時間が掛かってんだ、と叱られそうですが、何とか、このページに掲載することで許してね。

 で、彼女たちに「達人の指導を受けて、どうっすか?」と単刀直入に聞いてみた(達人本人の目の前で)。

■楽しい。技術だけでなく、人生論を語ってくれる。
■曲のストーリー作りを一緒にしてくれる。
■パートとしてのイメージを統一するのに、いろいろと手伝ってくれる。
■思わず、聴き惚れてしまう。


 などなど。そう。素顔の達人は、ああ見えて(失礼)、音楽は勿論、熱く教育・人生を語る人なのだ。

 さらに、定演へ向けての抱負をひと言ずつお願いした。

■真壁諒子さん(新2年。通称・リッキー)
 一番の初心者なので、足を引っ張らないようにしたいです。
■伊藤なつきさん(新2年。通称・つん)
 1つ1つの音に心を込めて。一音入魂です。
■吉川史恵さん(新3年。通称・フーミン)
 このメンバーで出来るのも、あとわずかだから、1日ずつ成長したい。完全燃焼。
■三堀弥生さん(新3年。通称・ヤヨ)
 完全燃焼。尚且つ、楽しく。
■大下桃子さん(新3年。通称・ピィ)
 終わってしまうのが信じられない。毎日を意味のあるものにしたい。パート練習では、表現を考えながら、完全燃焼できるようにしたい。...青春だから。
■佐藤美佳さん(新3年。通称・サッちゃん)
 迷惑を掛けているので、今回はそうならないように。我が道を行きます。

 さて、定演を終えた今、パーカスチームの面々はどう思っているかな?完全燃焼できましたか?

 今度、落ち着いて話せる機会に、聞かせて下さいね。アップ、遅れてごめんなさいね。

その2:橘田誠司先生
 
 “ダンディ橘田”。そう呼ぶことに、一切のためらいが生じない人である。

 定演当日は、ゲスト出演した高倉中学の部員引率でお忙しく、事前にお会いしておいてよかったです。

 今回お聞きしたのは、HWEの定演のステージに中学生が乗ることに対するプレッシャーや意義・楽しみといったこと。また、「トランペット協奏曲」で、HWEを指揮されることなど。
 
管理人「中学生を率いて、HWEの定演に上がる心境というのは、いかがなものですか?」
橘田先生「お金を取る演奏会なので、恥ずかしくないように、という意味ではプレッシャーがありますね。まだ1年しか教えていないですが、卒業生(新高1)の子達が、必死に喰らいついてきてくれましたから、どこまで出来るか、ということは楽しみでもありますよ。」

管理人「高校生の舞台に上がることの意義や、今回の目標をお聞かせ下さい。」
橘田先生「ん〜、体験入学的な要素も多分にありますね。実際には、集い(湘南吹奏楽の集い)で、合同演奏はしているのですが、単独ですからね。無様でなく、健気に、お客さんの心に届くように、気持ちで頑張りたいですね。」

管理人「トカレフさんを招いての曲で、昨年に続いてHWEにも振られますが...」
橘田先生「トカレフさんに関しては、一緒にやらせてもらうことで、ロシアの音楽をまた勉強させてもらえるチャンスなので、嬉しいです。HWEは、やはり中学生と違って、大人ですね。“うた心”が違います。」

管理人「と、言いますと...?」
橘田先生「恋や愛、というものに対する理解や経験の違い、と言っていいのかなぁ。それが演奏の表現力の違いになって出てくるのかと思います。」

 ふ、深い...。それなら、私も頑張れるような気が...(何に?)

その3:アレクセイ・トカレフさん
 
 “ロシアのアドレナリントランペッター”こと、アレクセイ・トカレフさん。「部活.ネット」への取材にご協力頂くのも、既に3度目で、私(管理人)の中では、“トカちゃん”と呼んでいる。

 勿論、前回の取材から、私のロシア語能力が向上したはずもなく、トカちゃんの日本語能力向上にひたすら依存するという、とても申し訳ないインタビューとなった。
 
管理人「昨年と較べて、HWEの技術的なレベルは上がっていますか?」
トカレフさん「上がってます。低音の伴奏、難しいのに、チューバが上手くやってます。音程・アタック・リズム、どれもよくなっています。」

管理人「HWEと一緒に演奏することに、どういう意義がありますか?」
トカレフさん「子供たちから、たくさんエネルギーもらってます。私からもエネルギー与えるようにしています。だから、一緒にやる演奏会は楽しみです。」

管理人「今回の演奏で、どういったことを最も大切にしようとお考えですか?」
トカレフさん「HWEと音を合わせることですね。私のロシアの色と、子供たちの日本の色で絵を描きたいです。」

 定演本番の感想については、既に書いたが、まさしく、トカちゃんの目指していたことが具現化されたのではなかろうか。

 取材へのご協力ありがとうございました。また、本番での演奏、お疲れ様でした。

定演終了後のインタビュー
 
その1:“達人”村松達之さん
 
 私(管理人)は、達人をダテに達人と呼んでいるわけではない。

 無論、打楽器奏者としての彼を評価できるようなレベルにはないが、少なくとも、音楽を通じて、子供たち(場合により大人たち)へのメッセージを送ろうとする人であり、人を育てることに対して、強い意志を持つ人であることは間違いない。

 今回の定演プログラムの中で、彼はこのように書き記している。
 
 「演奏会は今日一日で終わってしまいますが、この部活動においての一人一人の気持ち・行動は、後の人生で鏡に映すごとく返ってきます。今日答えの出ることではありません。どうか時間を無駄にしないで、充実した時を送って下さい。」

 含蓄がある。それが、彼の門下生に伝わっている。だから、輪が広がる。

 HWEの面々も、それを感じているから、彼についてゆくのである。

管理人「定演を終えて、ひと言お願いします。」
達人「現2年生とは、1年間付き合わせてもらって、ステージも多く、成長もよく見れました。今日の定演も、いい思い出を作れました。」

管理人「彼らに足りないものがあるとすれば何でしょうか?」
達人「冒険心でしょうね。まだまだ、型にはまったところでもがいている。殻を破って欲しいと思います。」

 とても短いインタビューだったが、達人のHWEに対する気持ちが表れているメッセージではなかろうか。

 達人、今後ともよろしくお願いします。

その2:“HWEの活火山”丸山透先生
 
 百名を超える部員に、常に熱を帯びさせる男。熱いったらありゃしない。

 そんな丸山先生には、もう何度インタビューさせてもらったかわからないが、またまた「新・丸山語録」も誕生する。

管理人「あらためて、HWEの音楽精神をお聞きします。」
丸山先生「音楽はやりっ放しではダメ。演奏者と聴衆が、いかに同じ空間で音楽を共有できるか。プロじゃないんだから、酔わせなくてもいい。」
 
管理人「なるほど。指導の根幹にあるものとしては?」
丸山先生「一生懸命なことはカッコ悪くない。よしんば、カッコ悪いとしても、進んでカッコ悪いことをやれ、と。もっと大人が必死な姿を見せるべきです。」

管理人「トカレフさんを招くことの意義は、生徒たちにはどのようにお話されているのですか?」
丸山先生「勿論、彼らの勉強になるわけですが、まず、ゲストに負けるな、と。ゲストの演奏が終わったら、お客さんが帰ってしまうようでは、負けなんだと言ってます。あと、トカレフさんはとても優しい。それは、そこに至るまでに、すごく辛い思いをしてきたからなんだ、ということは話しますね。」

管理人「今日の演奏については?」
丸山先生「目一杯でしょう。よくやりましたよ。去年より、明らかに進歩しました。あと、トカレフさんの演奏は凄かった。橘田先生を指揮台から引き摺り下ろして、自分が振りたくなりましたよ。」

管理人「プログラム構成は、『絵画的』であろうとしたのでしょうか?私にはそう思えましたが...」
丸山先生「そう言って頂けると嬉しいですね。ま、結果的にそうなった、というところもあるのですが、やはり、今日のプログラムは、あの順番でやらなければならなかったものだと思います。」

管理人「アンコールの際、もしや、ちょっと涙ぐんでました?」
丸山先生「まあ、毎年、あの場面ではうるうるしてしまいますが、今年、卒業してゆく第39期生たちが、HWEのレベルをここまで引き上げてきた、という思いも強いので、特にきちゃいましたね。」

管理人「卒業してゆく3年生たちに、贈る言葉があるとすれば、何ですか?」
丸山先生「卒業したら、もう他人だよ。ということですね。そりゃ、遊びに来てくれれば嬉しい気持ちもありますが、あとは自力で頑張りなさい、と。もう、この場に居ては、いけないんだよ、と言いたいですね。」

管理人「これからのHWEの行く末はいかがでしょう?」
丸山先生「先輩たちが到達した地点からスタートできますから、いい循環を生み出せると思います。」

 ありがとうございました。そして、お疲れ様でした。しばし、休火山となって下さい。...私のためにも。

北陵ウィンドアンサンブル 第25回定期演奏会プログラム
 
■プレステージアンサンブル
 打楽器四重奏・フルート四重奏・HWEサックスオーケストラ(23人編成)

■ゲストステージ
 藤沢市立高倉中学吹奏楽部
 「風の舞」(福田洋介)
 「スラヴィア」(ヤン・ヴァン=デル=ロースト)

■第一部
 「アルセナール」(ヤン・ヴァン=デル=ロースト)
 「海の歌」(レックス・ミッチェル)
  客演指揮:三浦孝一先生(大庭中学)
 「トランペット協奏曲」(アレクサンドル・ゲディケ)
  客演指揮:橘田誠司先生(高倉中学) ゲストトランペッター:アレクセイ・トカレフ氏

■第二部
 「悪魔の踊り」(ヨーゼフ・ヘルメスベルガーU世)
 「勇敢な飛行」(ジェイムズ・スウェアリンジェン)
 「スペイン奇想曲」(ニコライ・リムスキー=コルサコフ)
 
 

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帰りに『アルルの女』のCDを買いました
 
 昨年末のウィンターコンサート(こちらをご参照)をきっかけに、お付き合いさせてもらうようになった、藤沢西高校吹奏楽部。

 その時は、「体育館LIVE」と呼ぶに相応しい舞台(というか、床の上)であったが、今回は晴れて(?)本当の舞台での定期演奏会。
 
 ただ、この日(3/26)は、午後1:30から藤沢西、午後3時から鶴嶺の定演が予定されており、定演シリーズ初手から“涙のダブルブッキング”。

 で、当「部活.ネット」では、必殺の時間差攻撃に出ることに。

 まず、藤沢西には、開演前にお邪魔し、リハーサルを見た上、顧問の新倉先生と部長の浅井さんにインタビュー。そして、3部構成のうち、第2部までを聴いて、その後、茅ヶ崎まで移動し、鶴嶺の取材へ、ということになった。

 なので、部員諸君が苦心したと推察される第3部を聴かずに、この文章を書いていることは心苦しく、申し訳ないのだが、ご了承頂きたいと思う。
(一応、その補填の意味合いも込めて、先生と部員から頂いたメールをご紹介します)

 さて、ステージであるが、私(管理人)が特に注目していたのは、第1部の2曲目に演奏された『新しい地平線の上に』(ラリー・クラーク作曲)であった。

 というのも、この曲は昨夏の吹奏楽コンクールで演奏され、見事金賞(県大会出場)を獲得したのだが、その際、各高校の演奏を生意気にも採点していた私は、藤沢西の演奏の採点に困惑した記憶があるからだ。

 今回、それがどう聴こえるか。それが大きな関心事であった。

 ...素晴らしかった。

 県大会へ出場するだけのことはあったわけだ。

 勿論、その当時より技術的な進歩もあったろうし、精神的成長もあったろう。とにかく、バンドとしての習熟度の高い演奏で、特に木管の細かなフレーズでのシンクロ性が高く、私好みに仕上がっていた。
(ちなみに、私はダイナミックスの強弱があるのと、シンクロ性が高い演奏が大好きです)

 また、新倉先生が希望して演奏されたという「ラインフェルデンのスケッチ」(フィリップ・スパーク作曲)は、特に第二楽章でのコントラバスが印象に残るものであった。

 そして、冒頭のタイトルにもある第2部「アルルの女」。

 これはジョルジュ・ビセー作曲のあまりに有名な曲ではあるが、吹奏楽用に、新倉先生の高校時代(北陵)の恩師であり、昨年亡くなった竹高敬氏が調を変えることなく編曲したものだそうだ。

 この曲では、「メヌエット」 に於けるフルート(学生指揮でもある吉田真悠さんがソロ)の丁寧な演奏と、「ファランドール」での劇的な音量変化が印象に残った。

 思い入れのある演奏に触れて、私は思わず、帰路、「アルルの女」のCDを買ってしまった...。

 藤沢西高校吹奏楽部は、部員数35名(新高2・3)。マイペースな(?)新倉先生とともに、地域も意識しながら、一歩一歩前進してゆこうとしている。

 音楽の持つ力をよくわかっている彼らのこれからが楽しみである。

 今度取材できるのは、夏のコンクールだろうか...。部員数が増えたら、是非ともA部門(50人までの編成)でチャレンジしてもらいたいと願っている。

  
(左)顧問・新倉徹也先生 本番直前インタビュー
「定演が他の演奏会と違うところは、藤沢西高校の看板を背負って、設備的にも素晴らしいホールを借りてやる唯一の演奏会、というところですね。曲数も多いですし、時間も長い。準備も長かったです。それだけに、やっと本番か、という思いと、もう本番か、という思いが交錯しますね。出来れば120%を出したいです。」

(中)部長・浅井優那さん 本番直前インタビュー
「今の気持ちですか...。本番は何が起こるかわからないので、不安もありますが、楽しみでもあります。西高サウンドの明るさを音楽のメッセージとして、お客さんに受け取ってもらいたいです。自分たちばかりが楽しくてもダメなので、お客さんたちと一体化したいですね。」

(右)リハーサル風景
...新倉先生の腕時計が止まっていて、大変なことになったそうな....。

pre-stage ロビーでのアンサンブル
 
 プログラム本編が始まる前、ロビーに金管楽器5重奏が出現。

 どうやら、「西高年長組」と名乗る方々のようで、新倉先生は、この中でこっそりトロンボーンを吹いていたりする。

  

クラリネット吹き“少女M”より
「定期演奏会を終えて」
 
 私は吹奏楽を4年続けてきましたが、今回は初めての定期演奏会でした。

 何から何まで自分でやるから大変だよ、と先輩から聞いていたもので、楽しみな一方、不安もありました。そして実際に準備はとても大変でした。

 定期演奏会を創るにあたって、部員は5つの係に別れます。

 私はプログラムを作る係になり、パソコンを使って文章を打ち込んでいきました。迫り来る提出期限、先生からの直し、ページ枚数の調整、アンケートの集計。毎日最終下校まで残り、遅い時間にご飯を食べ、お腹いっぱいの状態で寝る。

 ギリギリまで先生からの直しを訂正して、なんとか仕上げたのは本番2日前でした。

 演奏面でも大変で、まず一番驚いたのは演奏する曲数。いくら休憩を挟むとはいえ、一度の発表で12曲も吹いたのはこれが初めてでした。

 そんな多くの曲をいっぺんに練習して、本当に全部出来るのかとても不安でした。土曜日と日曜日を部活に費やし、曲の感じを覚え、指を練習する毎日。三連休も潰して、練習。大変でしたが、毎日がとても充実していたと思います。

 そして迎えた本番は、緊張で何度か間違えもしましたが、とても達成感が残りました。

 アンコールも全て吹き終えて、先生の合図で立ち上がり、お客さんの喝采を浴びる時、私はこの曲を演奏している瞬間が好きで、そしてお客さんに喜んでもらう事が好きでここに立っているんだなぁとあらためて実感させられました。

 これからもいろんな音楽を楽しむために、吹奏楽部員のクラリネット吹きを続けたいと強く思います。
 
<管理人より>
 Mちゃんは、「部活.ネット」にしばしばメールをくれます。今や私の立派なメル友でありますが、高1としては、なかなかきちんとした文章の書ける子で、吹奏楽に懸ける想いも伝わってきます。
 できれば、今後もおじさんと文通して下さい。

BOSS新倉徹也先生より
藤沢西吹奏楽部と定演を語る
 
 あらためて、「西高の吹奏楽部の特徴は?」「西高の定演の特徴は?」と訊かれてみると、「ん〜、何だろう」となってしまうのが正直な気持ちです。

 演奏会をつくるうえで、いろいろなことをメンバーから言ってきます。演奏についても、演奏会のいろいろなしかけ(プログラム、照明、司会、舞台装置・・・)についても。高校生なんだから任せればいい、やりたいようにやらせたらいい、という考
えと、所詮高校生にやらせたってろくなものできないんだからこっちが指示すればいい、という考え、の対立、このバランスが難しいんです。

 西高の定演の特徴は、このやりとりを、ずいぶんやってきた結果、ということになるのかもしれません。

 3年生は一回引退した後ですでに部長が代替わりしていることから言えば、定演を本当の意味で「自分たちでつくる」ことができるのは2回です。たった2回。とくに2年生からすれば、自分たちなりに悔いのない、「いい定演」にしたい。自然といろいろなことを考え出します。演奏も。

 でも、僕も譲れるところは譲るけれども、逆に譲れないところは徹底的にやる。それも僕が用意するのではなくて、まずは彼らから考えてもらうようにする。このやりとりが西高の吹奏楽部、西高の定演の特徴です。

 ・・・とこう言ってしまえば早いんですが、1つ1つすべてをこうやっていくのは、かなり大変なんです。でも、それが大事なことかな、と思っています。僕が嘱託の指導者でなく、日頃は授業もやり、生徒とくだらない話もしあう「教員」であることの 強みの1つでしょう。
 
 演奏は、もちろんまだまだ未熟ですが、やってきたことを(少なくともこれまで以上に)ストレートに音楽として表現できたように思います(手前味噌でごめんなさい)。メンバーが、演奏している自分たちはもちろん、来ていただいたお客さん方に 楽しんでもらえる、今年版の西高サウンドにはなったと思います。「西高の音はこんなだなあ〜」と感じていただけるような演奏を意識しながら練習してきました。

 メインプログラムの「アルルの女」は、プログラムにはいろいろと語りましたが、練習のプロセスや本番のステージでは、今回のメンバーとどんな「アルル・・・」をつくるかしか考えてきていませんし、メンバーもその中でつくりあげてくれました。

 今回のメインとしても恥ずかしくない、いい演奏になったと思います。

 3部のポップスはみんなリラックスして、楽しいステージになりました。

 部員それぞれ(もちろん僕も)、後悔することが1つもない者なんていませんが、一方で満足のいく演奏会になりました。

 ご来場くださった皆さんだけでなく、多くの方々の支えあってのことであることは言うまでもありません。

 わずかな休息をはさんで、また練習再開です。

 4月9日(土)「春一番の音楽会」(大庭地区青少年育成協力会主催。ライフタウン内の大庭中学校、滝の沢中学校、西高のジョイント)が次のステージ。そして、お楽しみの新入生を迎え、2005年度版西高サウンドつくりがはじまります。
 
 定期演奏会ご来場の皆さん、ありがとうございました。「部活ネット」の皆さん、お忙しいところの取材もありがとうございました。また、ステージから・・・。
 
<管理人より>
 新倉先生とは、この定演後、他校の演奏会で何度かお目に掛かりました。ひじょうに音楽を通じての仲間を大切にされている印象です。また、気さくに声を掛けて頂き、ありがとうございました。
 これからも期待しています。また、取材へのご協力もお願いします。

藤沢西高校吹奏楽部 第23回定期演奏会プログラム
 
■プレステージ
 金管五重奏

■第一部
 序曲「インペラトリクス」(アルフレッド・リード)
 「新しい地平線の上に」(ラリー・クラーク)
 「シンフォニエッタ第3番『ラインフェルデンのスケッチ』」(フィリップ・スパーク)

■第二部
 「アルルの女」より(ジョルジュ・ビゼー作曲/編:竹高敬)

■ロビーアンサンブル
 フルート四重奏

■第三部
 「ハリウッド万歳」
 「スーパーカリフラジスティックエクスピアリドーシャス」
 「ナイト・バーズ」
 「ジュ・トゥ・ヴ」
 「シング・シング・シング」
 「ハウルの動く城 ファンタジー」

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部員自らの『考える力』がステージに
 
 藤沢西高校のところでも書いた通り、この日(3/26)は定演シリーズ初日でありながら、いきなり藤沢西と鶴嶺のダブルブッキングになってしまった。

 精鋭ではないにしろ、少数で運営している「部活.ネット」では、こうした事態にひどく脆い。で、事前に両校の顧問の先生方にも了承を得て、藤沢西は開演から第二部まで、鶴嶺は第一部の途中から(それでも1名、先乗り部隊として派兵しておきましたが)、ということになったことを先に言い訳がましく伝えておきます(汗)。

 さて、私(=管理人)が吹奏楽の定演を聴くようになって3年目であるが、03年春と較べると、鶴嶺吹奏楽部が明らかに変わった点がある。

 それは「現役生による徹底した自主運営」ということに尽きよう。

 顧問の堀内昌之先生が、本格的に指揮を執るようになってからのことであり、彼は常に「部活は顧問のものではなく、生徒たちが作ってゆくものだ」というポリシーに徹している。

 新3年生たちに、特にそれは色濃く反映されており、危うさも残しながら、必死に、そして楽しく演奏している様子が伺われる。

 
 実際、鶴嶺吹奏楽部の総合力というのは、間違いなく上昇している。それは、昨夏のコンクール(こちらを参照)で湘南地区金賞、アンサンブルコンテストではフルート三重奏が県大会でも金賞に輝くなど、結果を見ても明らかである。

 そして、演奏を聴けば「ヘタでもいいから楽しもう」という姿勢ではなく、「音楽的にも詰めていった上で楽しもう」というレベルにまで来ていることがわかる定演であった。

 殊に第一部最終曲の「ミス・サイゴン」は、昨夏のコンクールで金賞を取りながら、県大会への出場が叶わなかった(こういうのを専門用語で『ダメ金』と呼ぶらしい)際に演奏されたもので、その怨念か(?)素晴らしい出来栄えであった。管理人の個人的趣味も多分に入っているだろうが、パーカッションがうねりをつけるような曲を心地よく演奏してもらうと、スカッとする。

 そして、第二部こそが「自主運営」の真骨頂なのであろうが、パートごとの帽子(昨年はパート別Tシャツだった)を被り、振りつきで演奏する『パート紹介』は、この辺りでは鶴嶺高校だけがやっているもので、伝統的でありながら、新しくもあり、私はとても楽しみにしている。

 また、学生指揮による演奏と、大胆なダンスを取り入れた構成も、29名(新2・3年生)という部員数を考慮すると、実によく考えられている、と言えよう。

 ダンサーの一人、赤羽珠美さん(新3年。パーカッション)に感想を聞いてみると、「最初は恥ずかしかったけど、どうせなら思い切ってやろうと。もっと派手にやってもよかったかな...」とのこと。

 アンコールでは、堀内先生が“自分を捨てて”「ばか殿」風に(?)登場。『マツケンサンバ』を指揮する姿は、微笑ましくもあった。
(こんなこと書いたら、叱られるかな?)

 さて、堀内先生赴任後、着々と力を着けてきた鶴嶺吹奏楽部であるが、ある意味、岐路に差し掛かっていると言えよう。

 夏のコンクールのことである。

 どうやら新1年生が20名近く入部したとの噂(4/20時点)で、新3年生も含めれば50人ほどの集団になる。つまり、昨夏まではB部門(35人までの編成)に出場していたが、今年の夏はA部門(50名までの編成)での参加も考えられる、という「嬉しい」岐路ではあるが。

 これまでは、定演ののち、新入生に対する指導が終わると、引退してゆく部員が多かったようであるが、これを機にA部門へ、ということも考えられるのでは?と、思う次第である。

 部員の皆さん、どうですか?

  
  

管理人推奨:鶴高名物『ザ・パート紹介』
 
  
 
  
鶴嶺吹奏楽部定演に於いて、毎年私が楽しみにしているのが、この「パート紹介」。可愛らしい振りつきで演奏する。

after the stage 『卒業生を送る会』
 
  
 
 演奏が終了し、全ての客が引き上げたあと、このセレモニーは始まった。

 卒業してゆく3年生7名に対して、1〜2年生が一人一人に宛てた「表彰状」を渡し、ステージ上から『旅立ちの歌』を熱唱。客席でそれを聴く3年生。そして、卒業生たちがステージで、花束を受ける。

 簡素と言えば簡素であるが、心のこもった贈り物であり、卒業生にとっては忘れられないものとなろう。

 ちなみに、1・2年生たちは、3年生たちに見つからないように、こっそり練習していたそうな。
 

部長・副部長にインタビュー
 
  
黒服が部長の山内未来子さん。白服が副部長の小山内紫穂さん。
 
 演奏と「卒業生を送る会」を終え、ホッと一息のご両人。話は自ずと『鶴嶺吹奏楽部らしさ』ということに。

 ちなみに、部長の山内未来子さんは、前部長・山内麻奈未さんの妹。昨年は山内シスターズで学生指揮をやっていた。

 副部長の小山内さんは「小さい山内」と書く。あまりに出来すぎた話ではあるが、事実なのでしかたない。

 インタビューは、まず山内さんが応え、それに小山内さんが相槌を打つことで進行した...。

管理人「今日の演奏はいかがでしたか?」
山内さん 「楽しかったです。時間が過ぎてゆくのが速かったですね。」
管理人「MCでは、『“何もしない堀内先生”は自主性を培う狙いで、それにはまって、考える力がついた』というようなことを言ってましたが、それは本心?」
山内さん「そうですね。最初のうちは、なぜだろうと思っていたのですが、もうやるしかない、という感じで。」
管理人「具体的には、どういったあたりでその自主性というのを求められるわけでしょう?」
山内さん「コンクールの曲とかも、部員で決めました。やっぱり考える力は自然についたと思います。」
管理人「新3年生はこれで引退なのかな?」
山内さん「新入生の人数にもよりますが、3年でもコンクールに出る人もいます。というか、私は出たいですね。」
管理人「そうですね。去年のアンサンブル(フルート三重奏)を聴かせてもらって、君が抜けてしまうのは勿体ないと思っていました。」
山内さん「ありがとうございます。」
管理人「さて、学生指揮の楽しさと辛さ、というのがあればお聞きしたいのですが...」
山内さん「私はもともと前に出るのが好きなので、指揮について辛い、ということはほとんどないですが、強いて言えば、アイコンタクトが通じない時はもどかしいですね。」
管理人「そう言えば、アンサンブルの時も、君のアイコンタクトでシンクロしていたね。」
山内さん「実際の指揮でも、アイコンタクトに応じてくれると、すごく嬉しくなりますね。」
管理人「鶴高サウンド、というのをひと言で表すと、どうなりますか?」
山内さん・小山内さん「(しばしの沈黙ののち)...『一生懸命』ということではないでしょうか。」
管理人「コンクールのことをちょっと訊かせて下さい。新入部員の数によって、3年生が出るか出ないか、ということが決まるということでしたが。」
山内さん「そうですね。これまでB部門で培った経験値を活かすためにも、Bで出て、県大会に出場したいと考えているので、3年生は人数調整になる、ということがありますね。」
管理人「では最後に。後輩たちへのメッセージをお願いします。」
小山内さん「鶴高らしい演奏をしてもらいたいと思います。大人数でなくても温かい音楽を。」
山内さん「同学年の絆を大切にしてもらいたいと思います。最後に頼れるのは、同じ学年の人たちですから。」

管理人「ありがとうございました。演奏お疲れ様でした。」

 部長の山内さんは、リーダーシップ満載、という感じでした。是非、コンクールでもキレのよいフルートを聴かせてもらいたいと願っています。

顧問&指揮:堀内昌之先生にインタビュー
 


実は情にモロい堀内先生
 この日、藤沢西高校の定演を取材した関係で、第一部の途中からしか聴けなかったことを詫びると、意外なことが判明したのであった。

 実は、堀内先生と藤沢西の新倉先生は、高校時代(北陵)吹奏楽部の同期生だった。いやぁ、驚いた。

 で、高校時代は当然のことながら、『アルルの女』の編曲をした故・竹高敬氏に師事しており、やはり何らかの影響は受けている、とのことだった。

 世の中狭い、ということでしょうか...。

管理人「お疲れ様でした。今回のデキについてはいかがですか?」
堀内先生「よかったと思います。練習ではまだ受身のところもありますが、本番はそれなりに演奏していたと思います。」
管理人「鶴嶺吹奏楽部では、いわゆる自主運営ということがしばしば言われますが、その真意というのは、どういったあたりにあるものでしょうか?」
堀内先生「部活は顧問のものではない、ということに尽きますね。全てに於いて、こちらから『こうあるべきだ』と言ったことはないです。生徒たちで作る。私自身も、高校時代の恩師から、『こうあれ』と言われた記憶がありません。僕も音楽で譲れないところも時としてあるわけですが、あくまで生徒たちが主役ですから、我慢することもありますよ。」
管理人「実際、現在の部員たちは、先生の目から見て、どのように映りますか?」
堀内先生「先程言いましたように、ちょっと受身なところがありますね。中学時代の型から、一度出て、彼らの考えている音楽性というのをもっとぶつけて欲しいと願っていますね。ただ、僕はちょっと情にモロいところがありまして、現2年生(新高3)に対しては、思い入れも強いですね。」
(管理人・注 堀内先生は新高3の入学と同時に指揮を執られるようになった)
管理人「なるほど。ところで、定期演奏会、というのは、他の演奏会と何が違うでしょうか?」
堀内先生「定演は日頃の活動の集大成ですね。十分な準備をして、志を持て、と。まだまだ緻密に音を追い求めることも出来るかもしれませんから。」
管理人「ちょっと気が早いかもしれませんが、夏のコンクールでの目標等があったら聞かせて頂けますか?」
堀内先生「ん〜、ちょっとした過渡期にあるかもしれませんね。去年、B部門で金賞を取りましたから、今年も金賞は取りたいですが、人数が増えればA部門に行けばいい、とも思いますし。Aなら課題曲と自由曲で2曲演奏できますから、それだけ力もつきますしね。」
管理人「山内部長は、今までの経験を活かす意味でもBで、と言っていましたが。」
堀内先生「そうですね。部員たちは、僕が『県大会へ行こう』と言い出すのを待っているフシがありますね。僕自身は、コンクールに対して少し引いている部分もあるのですが、生徒たちの強い希望であるなら、対応してあげたいとは思っています。そうした意見のぶつかり合いを繰り返すことが重要ですね。」
管理人「では、最後に、今後の活動予定を教えて頂けますか?」
堀内先生「大岡祭、慰問演奏、出前演奏と、地域との繋がりを考えていきたいですね。特に円蔵小学校・円蔵中学校との繋がりは重視したいと思います。」
管理人「ありがとうございました。」

 堀内先生への、これだけのロングインタビューは初めてでした。同期の新倉先生ともども、今後とも「部活.ネット」へのご協力をお願いします。お疲れ様でした。

鶴嶺高校吹奏楽部 第23回定期演奏会プログラム
 
■T部
 オペラ『ナブッコ』序曲(Giuseppe Verdi)
 アルメニアンダンス パートT(Alfred Reed)
 ミス サイゴン(Claude-Michel Shonberg)

■U部
 ディズニー・プリンセスメドレー
 『ウェストサイドストーリー』メドレー
 『ハウルの動く城』ファンタジー
 CHICAGO